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最高裁判所第一小法廷 昭和48年(行ツ)57号 判決 1975年8月06日

富山県中新川郡舟橋村舟橋一〇八一番地

上告人

稲生貞之

富山県魚津市北鬼江三一五番地の二

被上告人

魚津税務署長

紅谷義次

右指定代理人

平塚慶明

右当事者間の名古屋高等裁判所金沢支部昭和四七年(行コ)第二号課税処分取消請求事件について、同裁判所が昭和四八年二月二八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の昭和四八年五月三日付上告理由書記載の上告理由第一点、第二点及び昭和四八年五月八日付上告理由書記載の上告理由について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、すべて正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するにすぎないものであつて、採用することができない。

上告人の昭和四八年五月三日付上告理由書記載の上告理由第三点について。

記録を精査しても、原審における被上告代理人の代理権の欠如があるものとは認められない。論旨は、独自の見解に立つて原判決の違法をいうものであつて、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岸上康夫 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸盛一 裁判官 団藤重光)

(昭和四八年(行ツ)第五七号 上告人 稲生貞之)

上告人の昭和四八年五月三日付上告理由書記載の上告理由

第一点 原判決の判断に、判決に影響をおよぼすことが、明らかなる、採証法則の違背がある。

すなわち、上告人の昭和四〇年度の、農業所得税の基本となすべき耕作面積は、舟橋村役場の耕作人台帳記載の面積であり、甲第二号証の一、に記載されている面積である。

然るに原判決は、第一審裁判所が提出した、要約調書案(昭和四四、九、五日頃提出)にも、また昭和四四年一一月七日、要約調書案と取りかえた要約調書の、123丁にも「別表(二)、の耕作面積は否認」と上告人(原告)の主張を記載しておりながら、被上告人もこれを認めている、甲第二号証の一、を採用せず、別表(二)を採用して判決したことは、明らかに採証法則の違背であることを、第一点の上告の理由とする。

(1) 役場の耕作人台帳の面積については、上告人(訴訟人)は昭和四七年一〇月一七日付の準備書面2枚目裏2行以下に記載したとおりであるが、耕作人台帳の面積は、所得税課税の資料として、魚津税務署へ報告するため、村長が各部落の生産組合長に、各耕作者の耕作面積の調査を依頼し、生産組合長から報告された面積で、舟橋村の農業経営者のすべての者が納得している最も公平な面積で、農業経営者のすべての者が、課税の基本としている面積である。

被上告人も上告人に対し、その様に課税し、それを認めておりながら、係争年度に限り、これを否定する被上告人の主張は、不合理であると共に、役場の耕作人台帳記載の面積を、採用しなかつた原判決には明らかなる採証法則の違背がある。

上告人の準備書面(昭和四七、一二、二日)(一)枚目裏、一一行、三、以下と、同日添付の証明書資料参照)

(2) 上告人の昭和四〇年度の耕作面積は、昭和三九年度の耕作面積と、同じ面積であつて、生産組合長からも、同じ面積で届けられている事は、甲第二号証の一、に記載してある、面積によつても明らかである。

六男春光については、昭和四七年一二月二日の、上告人(控訴人)の準備書面(二)枚目裏四、6行目以下に陳述したとおり、独立したのは、昭和三八年秋の末で、被上告人も認めた、甲第二九号証は、昭和三九年二月一七日、春光は、二反五畝一四歩の耕作面積を、所有していたことを、明らかにしている。

また、同三九年三月二一日、知事の許可を得て、一反九畝一七歩自作地を買つたことも、甲第二四号証の三、及び四、同ノ五、同ノ六、同ノ七、によつて被上告人も認めている。春光は、昭和三九年産政府買入米三〇俵、村長の指示により政府に売り渡したことも、甲第六号証の一、二及び甲第一六号証、のとおりで、被上告人もいずれも認めているのである。

(3) 昭和四〇年、上告人の長男、舟橋一、四五五番地、稲生隆吉が農業を放棄した際、更に兄隆吉の田を賃借し、生産組合長から村長に届けられ、役場の耕作人台帳に、記載されている面積は、甲第二号証の一、のとおり田、九反一畝、畑、一畝となつている。

被上告人も認めた、甲第六号証の一四、によれば舟橋村長も春光に対し、昭和四〇年産政府買入米、六八俵を指示した事も明らかであり、政府に売り渡している事も明らかである。

春光は昭和四〇年度の所得税は、乙第六号証の確定申告書のとおり、昭和四一年三月一五日、一一、八〇〇円納付している。

(4) 貞吉は上告人の八男である、大阪市扇町七五、に居住していた時、兄稲生隆吉の耕作地を、引継いで耕作する事に、決まつたのである。

詳細は、上告人が昭和四七年一二月二日、提出した準備書面(三)枚目裏8行目、五、以下に記載したとおりである。

昭和四〇年、生産組合長から、村長に届けられ、役場の耕作人台帳に記載されている面積は、甲第二号証の一、に記載してある面積であつて、田、九反一畝、畑、一畝が貞吉の担税すべき面積となつている。

貞吉は昭和四〇年度の、確定申告書は、乙第二〇号証、のとおり提出し、九、四〇〇円、所得税を納付している。

昭和四〇年産、政府買入米についても、村長は、甲第六号証の一五、のとおり指示しており、被上告人も認めたとおりである。

(5) 生産組合長から耕作面積が届けられ、村長が認めて役場の耕作人台帳に、記載された者は、農業経営者である。

昭和三九年村長の指示に従つて、政府に米を売り渡した、稲生春光と、大阪市扇町で独立していた、稲生貞吉が、兄の耕作地を引継いだからとて、上告人の耕作面積に、異動を生ずる理由はない。

(6) 上告人の、昭和四〇年度の耕作面積は、生産組合長から、村長に届けられ、役場の耕作人台帳に、記載されているとおりで、三九年の耕作面積と、同じであることは、甲第二号証の一、によつても明らかである。村長にも、役場の耕作人台帳にも、誤りはない。役場の耕作人台帳に、基かない採証法により判決したことを、上告理由の第一点とする。

また、判決に採用した、別表(三)、には、上告人の母、稲生トキの扶養控除がない。

第二点 原判決には、最高裁判所判例に、相反する判断をした、違法がある。

すなわち、舟橋村で国の仕事をしている首長は、舟橋村、村長である。村民として最も信頼している者は村長である。その村長が認めた、役場の耕作人台帳に記載されている、稲生春光、及び稲生貞吉が上申書、陳述書に、不安を訴えている事が最高裁判所判例に、相反する判断をする違法が、潜んでいたからである。

一、稲生春光は、昭和三九年、甲第二九号証の耕作地と、甲第二四号証の三、及び五、による自作地と、併せて耕作していたが、自作地の登記手続きが届けの期日に間に合わず、三反末満のため、耕作人台帳には、記載されなかつたが、舟橋村長は、耕作の事実を認めて、甲第一六号証のとおり、昭和三九年産、政府買入米を指示している。四〇年役場の、耕作人台帳に記載され、甲第六号証の一四、のとおり村長の指示どおりの、政府買入米も完納し、乙第六号証のとおり所得税も納めた後、被上告人(被告)が、春光の耕作を認めないので、春光は甲第二四号証の一、となつている陳述書を出している。その記載事項中250丁、三二行目に「私の自作権、耕作権が侵害される心配もあり、相続等の事に就いても、兄の田を耕作したのと、父の田を耕作したのと、法的解訳も異なる……」と不安を訴えている。斯様な判決には、最高裁判所判例に、相反する判断をした、違法があるからである。

二、また稲生貞吉も、甲第二号証の一、の面積に基づいて、乙第二〇号証、のとおり、昭和四〇年分の、確定申告と共に、納税もしたと述べている。第一審判決も、原判決も、この貞吉の耕作面積も、役場の耕作人台帳に記載した、村長の認意に反し、上告人の耕作面積として、不合理な、事実に反した理由により判決したのである。

貞吉は、第一審裁判所に提出した、上申書(甲第二一号証の一、)244丁四行目「私の耕作地は、村長も認め、農業委員会長も認めているのである。兄さんの耕作地でも、誰の耕作地でもない。之れに反した、税務署長の考えは、私の耕作権を侵害し、延いては、生存権にも不安を及ぼす!」と不安を訴えている。

また「後日兄から耕作したものを、父から耕作したと誤られては法律的の解訳にも、不利な問題が起る恐れがあると思う」と訴えているのは、五人の兄と三人の姉の間柄を心配しての訴えと思う。

尚「私は藤沢薬品入社以来、独立していると信じています。後日の為にも、私は兄さんの耕作地を、引き継いだものと、お認め願いたい」とのべている。

村長に耕作者であると、認められて、役場の耕作人台帳に記載され、農業委員会長にも、耕作者である事を認められて、上告人と同じ様に、案内待遇を、受けてもいたので学校の初穂米の寄附や、歳末助け合い募金、其の他の一世帯当りの寄附は、必ず応じていたのである。830丁九行目以下参照。

春光にも、貞吉にも、留守の時は立替を頼まれていたので村報、其の他の配り物がされた、昭和四〇年の秋頃からは、一世帯当りの寄附は必ずしている筈である。

三、村長が認め、事実間違いのない、稲生春光、及び同貞吉の耕作地を、上告人の耕作面積として、した原判決には、最高裁判所判例に、相反する判断をした、違法があるからである。

第三点 原審訴訟手続には、被上告人代理の訴訟代理授権の欠缺を看過して、した違背がある。

すなわち、第一審裁判所が、昭和四四年九月五日頃、要約調書案、を提出したのであるが、上告人は、別表(一)、にある抹消線(830丁裏五行以下参照)は、戸籍にはないものであると、主張した処、書記官は、別表(一)、の抹消線は、裁判所の誤りであるから、取りかえてほしい、と昭和四四年一一月七日、要約調書、と、取りかえた事と、またそれに、不合理の、丁番号を附している事は、被上告人代理の訴訟代理授権の、欠缺を看過して、した違背がある。

(一) 上告人の昭和四〇年度の、確定申告書は、乙第一九号証、のとおりであつて、扶養控除に、「稲生トキ、母昭和四〇年一月六日死亡、 稲生美和子、三女、昭和四〇年六月一一日以降、一二月三一日まで扶養控除の二人を申請していたが、被上告人は、上告人の申請には関係しない、六月一〇日までの理由により、乙第二一号証(313丁)によつて、三女美和子の扶養控除を、取り消したのであるが、要約調書案の別表(三)、には、母トキの扶養控除がしてないので、別表(一)、の「トキ、明治一三年五月五日、母、昭和四〇年一月六日死亡」に抹消線を引いたものと、推認されるのである。

(二)、また要約調書案の別表(一)、の貞吉の備考欄に、記載してあつた、「昭和四〇年三月二六日、大阪市北区扇町七五番地へ転出、昭和四一年一月二五日、前記より転入」に、斜の抹消線数本を引いたのも、同案別表(三)、に、八男貞吉を、専従者控除したので、貞吉は大阪扇町七五番地の在住では、文書上、不合理と考え、抹消したものと推認する。故に、原審訴訟手続には、被上告人代理の、訴訟代理授権の、欠缺を看過して、した違背がある。

(注) 昭和四四年一一月七日の、期日呼出状に、「要約調書のことですがなんとか一一月二日頃まで提出して下さい。」と貼紙に書いている。

(三)、上告人が、要約調書案に、対してなした、昭和四四年一一月三日提出の、陳述書に「準備手続終結後提出、第二回弁論陳述せず」と記載し(昭和四四年一一月三日受付けている)813丁、より831丁、迄の丁番号を附し、納得出来ぬ順位に綴つている。

また同年同月七日、要約調書案の取りかえに際し、上告人の拒みに対し、別表(一)、以外は内容は、同じものだから、といつて取りかえられたものであるが、要約調書案を、要約調書、と書きかえ、内容も書きかえたもので、記載の位置が変つていて、上告人の、四四年一一月三日提出の、陳述書とは、符合せぬ点も生じている。四四年一一月七日、取りかえた、要約調書に、115丁より129丁までの丁番号を附して、いることは、了解なし難く、要するに、原審判決は、第一審判決を引用し、要約調書の記載事項を、引用して判決して、いるのであるから、以上に対し、原審訴訟手続には、被上告人代理の訴訟代理授権の、欠缺を看過して、した違背がある事を、重ねて上告の理由とする。

以上、いずれの論点よりするも、原判決は違法であり、破棄さるべきものである。

以上

上告人の昭和四八年五月八日付上告理由書記載の上告理由

原審判決は、理由として、「被控訴人が控訴人の、昭和四〇年分所得税として、昭和四三年五月一五日に、控訴の趣旨記載の如き、(再)更正処分をなしたのは、相当であつて、何等違法の、点はない」としているが、原審判決に引用した、要約調書の115丁、裏九行目、(請求原因)

一、以下23行省略、116丁裏、八行より「昭和四三年五月一五日頃、被告は、税額の計算などに、誤謬があつたとして、所得金額、一、〇九一、五〇〇円、所得税額、一三〇、五〇〇円、過少申告加算税、五、八〇〇円、と更正し、その旨原告に通知した。117丁、

二、よつて原告は、被告が稲生春光、同貞吉の各所得をも、原告の所得として、加税した、昭和四〇年分所得税の、更正処分は、不当であるから、その取り消しを求める。」と、記載しているとおり、上告人の主張は、今もそのとおりであるから、判決の理由は、矛盾している。

一(1) 「いわゆる「耕作人台帳」について、」採証した、乙号証に対し、次のとおり、上告人は陳述する。

乙第三号証は、上告人が、昭和四三、一二、一〇日、提出した706丁六行目の、書面に、記載したとおり、曰く付の、他は認めて、いるのである。

この書面も、昭和四三、一二、一〇日に受付けながら706丁の丁番号を、付しているのは納得が、出来ない。

乙第三号証の、記載事項中、「六俵田、一三三一番、一反五畝〇九歩は、土地台帳では、地目荒地と、なつていたが、上告人は稲作していた事は、事実である。故に生産組合では、上告人の耕作地として、万雑費も徴収しており、生産組合長から村長に、上告人の耕作地として、以前から届けてあるもので、以前から所得税を、担税し甲第二号証の一、に含まれているものである。 276丁

また「小田、一六九番、地目、荒地、二畝一二歩」は上告人の、耕作地として、昭和三九年まで耕作し、村万雑費も負担して、いたものであつたが、昭和四〇年春県道に面したので、甲第九号証の五、のとおり、荒井隆治の製材所の材木置場、となつて、いたものである。

尚277丁、に記載の、雑種地、友次郎一反一、一〇歩、貞之八、二二歩、隆吉二〇歩、同丁、10行目に、収入役がのべているとおり、「合計二反〇二二歩ありますが、このうち相当部分が、耕作地になつている筈で、その実際は、区長が把握していると思います」と述べているとおりで、その大部分は耕作地であるから、村万雑費も一律に、田面積として、負担し、また、生産組合長から、地目によつて差別せず、それぞれ耕作者の面積として、村長に届けられて、いるのであるから、乙第三号証、に記載している、六俵田も、小田も、その他二反〇二二歩の雑種地も、役場の耕作人台帳に、漏れている面積はないのである。

故に、乙第三号証は、甲第二号証の一、を否定する理由とはならぬ。

乙第一三号証、(297丁、及び298丁)には、耕作面積についての、記載事項はない、従つて甲第二号証の一、に影響はない。

乙第一七号証、記載事項は、甲第九号証の一、及び同の二、同の四、に、関しているが、役場の耕作人台帳や、甲第二号証の一、に、関していない。

乙第一八号証、記載事項は、役場の耕作人台帳、及び甲第二号証の一、に関してはいない。

原審判決に、採証した、何れの乙号証によるも、役場の耕作人台帳に、影響するものはない、従つて甲第二号証の一、を、採証しなかつたことは、原審判決の誤りである。

(2) (被控訴人)被上告人主張の(原判決別表(二))については、上告人の昭和四〇年の、耕作面積とは、符合せぬものであり、舟橋村長の、認めたものでなく、事実に反する、出鱈目であるから、破棄する外は、ないものである。

二(1) 春光名義の農協預金の払戻しについて

上告人は役場か、農協へ用事があつて、行つた時、ついでに春光に頼まれて、通帳を預り、使をしたことはあるが、帰るとすぐに、通帳と頼まれた、金額を渡している。我子でも一旦、独立させれば、金銭に関する事は他人である。原審判決記載の字句は、事実に照し適当でない。38丁の(五)参照。

また「右預金払戻の明細につき名義人の春光自身が答弁できぬ部分が多々あるので」と述べているが、春光は昭和四〇年の預金通帳について、六年も経過した時、初年度ならば、まだよいと思うが、二年目のことを聞かれて、申し分ない答弁と、上告人は聞いていた。

尚「控訴人、貞吉、春光の各口座から、同日預金払戻のなされている事実」と、とんでもない所に、気を廻したような記載事項で、引き出しがあつたからとて、上告人は何も感じないが。

乙第二六号証336丁、乙第二九号351丁、同355丁、の各、口座から、七月一二日に、預金の払戻しが、なされている事実、と述べているが、上告人の預金通帳によると、被上告人も認めた、甲第二七号証、のとおりであつて、七月一二日には、上告人は預金の引出しを、していない事は、769丁、一二行目、に陳述しているとおりである。

また、同書面に、記載している「事実も甲第二七号証のとおりであるから、乙第二六号証は否認する」と記載したとおりである。

原審判決の理由に、上告人の否認した、乙第二六号証を、「成立に各争いない」として引用し、被上告人も認めた、甲第二七号証に、反する判断をして、した原審判決は、明らかに判決に、影響を及ぼすこと、明らかなる、法令の違背であり、第三九四条に該当する。

(2) 万雑費について

原審判決の理由として、万雑帳により、のべているが当らない(甲第一〇号証参照)被上告人が、昭和四〇年、農業所得額を、決定した者に、森ヨシイがある。被上告人のした、所得決定額は、二九七、〇〇〇円である。乙第二三号証、にも、乙第二四号証にも、森ヨシイの氏名はない。

稲生春光は、甲第三号証の四、のとおり、稲生貞吉は、甲第三号証の三、のとおり、それぞれ、負担したのである。

原審判決の、万雑費に対する理由は、森ヨシイの、一例によつても、成立しないのである。

(3) その他村の交際関係について

さきに(2)に、陳述したとおりであり、また、昭和四〇年秋から、村報等の、配りものが来たので、830丁記載のとおり、「年末助け合い、中、小学校の、初穂米、寄附等は、していないことは、ないと思つている。」と、述べている、とおりである。原審判決の理由は、事実に反する。

三、春光、貞吉の関与した経営の主体を隆吉と認むべき可能性について

「隆吉が転居前に右経営の主体として右経営体のため資材肥料等を買入れ種々の作業をしたことは認められるとしても(原審証人稲生隆吉の証言)同証言の一部によると、同人は収穫前の転居に際し、かゝつた経費だけを貰つて、経営を後継者に引継いだ事が認められるから、右年度における右経営体の所得が同人に帰属するはずがない」以上は、原審判決の理由である。

右隆吉に対し資材肥料代を、甲第六号証の二五、のとおり支払つた者は、稲生春光であり、甲第六号証の二四、のとおり支払い、した者は、稲生貞吉である。

春光、及び隆吉が、資材及び肥料代を、隆吉に支払つているのに、耕作上関係のない、稲生隆吉の耕作地を、上告人を耕作者と認定した、原審判決は、甲第二号証の一、の村長の認定に反し、条理に反する違法がある。

また、「成立に争いない甲第六号証の一八、一九」と、のべているが、春光、貞吉が耕作していたから、成立に争いがないのである。第三者が耕作していたとすれば、親でも子でも、耕作者の、同意なくて、成立する道理はない、これに依つて見るも、春光、貞吉の耕作していた事が、明らかである。

四、控訴人の自白の撤回について、」と述べているが

要約調書115丁裏(請求原因)一、以下二三行省略、116丁裏

「昭和四三年五月一五日頃、被告は税額の計算などに、誤謬があつたとして、所得金額一〇九一、五〇〇円、所得税額一三〇、五〇〇円、過少申告加算税、五、八〇〇円と更正し、その旨、原告に通知した。

よつて、原告は、被告は稲生春光、同貞吉の各所得をも原告の所得として加税した昭和四〇年分所得税の更正処分は不当であるから、その取消を求める。」と記載しているとおりその主張に変りはない。

控訴人の自白の撤回とは、上告人の一貫した、主張よりしても、絶対ありえない事である。

原審判決理由に記載している「仮に原告が昭和四〇年に春光、貞吉の土地を耕作したとすれば」と記載しているが上告人は絶対に、春光の土地を耕作してもいないし、また貞吉は、当時一歩の土地をも、所有しておらず、上告人にして見れば全く無意義に近い、記載事項である。

上告人は、一一月七日、取かえ前の、要約調書案に対して、「仮りに原告が昭和四〇年度に春光貞吉の土地を耕作したとすれば云々」とあるが、仮定は仮定であつても、事実上、耕作しないから、仮定説は認めない。」(案、と調書は一枚違う)と述べているものである。例え813丁は未陳述に終つても、要約調書の116丁以下の上告人の主張に反する判決である。

乙第三号証に記載されている地目上の雑種地も、田畑である以上、706丁、参照

村万雑費も、その耕作人が負担し、生産組合長から、村長に届けられ、悉く担税の対象として、納税している面積である。

石川功の証言は、認められているのが、上告人には了解出来ない。何故ならば、被上告人主張の、準備書面、19丁より22丁、までの、録音同様のもので、共同撒布した、農薬を除けば、ありえざる陳述、のみであつた事を、記憶する。

同準備書面に依つて、石川功の証言を、拾つて見るならば、石川功の証言は、被告準備書面(四三、三、二六日)同様に付陳述する。

19丁、裏

一、に対し(1) 稲生隆吉が、春光、貞吉に、自分の耕作地を、耕作せしめたからとて、上告人は分離して、申告する必要もなく、また分離して申告していない。

(2) 春光は、昭和三九年村長に、耕作者である事を認められ、甲第一六号証、のとおり、三九年産政府買入米の、指示を受けており、また農業委員会長も、甲第二九号証のとおり、三九年二月一七日、己に二反五畝一四歩の耕作を認めている、また三九年、立山町、上市町の農地を、一反九畝一七歩買つているから、被上告人は不動産取得税を、徴収している筈である。昭和四〇年には、舟橋村長から、甲第六号証の一四、のとおり、六八俵の政府買入米の指示を受け、乙第六号証のとおり、四一年三月一五日、確定申告と共に、納税しているのである。

(3) また、貞吉は、上告人とは別に、大阪で独立した、生計を営んでいたものである。この独立した者同志が、耕作面積の異動をしたからとて、上告人の耕作面積に、異動を生ずる、訳もなく、従つて「原告の所得と分離して申告した」とはありえざる第一項の証言である。

二、に対し、被上告人の主張は春光、貞吉に、課税すべき主張であるにも係らず、上告人に課税すべき証言をした誤りがある。二〇丁

三、に対し、上告人の要請でない。準備書面、記載のとおり上告人は隆吉の頼みにより、使したので証言に誤りがある。

四、に対し(1) 耕作名義は名目上ではなく、実際そのとおりで、上告人には、関係のある筈もなく、生産組合長から、届けられたものである。

(2) 春光は、独自の経営方針によつて実行し、貞吉の耕作地に、対する、方針は、同人の兄であるから、上告人であるとした、証言は誤りである。

五、に対し(一) 住民票上の手続きがおくれていた事と、炊事設備が共同であつた、ことは認めるが、その他は、33丁、第五項に、記載しているとおりであるから、同人の証言は、誤りである。

五、(二) 春光及び貞吉は、隆吉の農機具を、甲第二五号証、257丁、のとおり使用していたので、不自由はしていないのである。但し上告人の農機具を事実に反した、記載事項のあつたことは、事実である。

農協出資口数、五一口、は原告のもので、今もそのとおりである。

証人は誤解を招く、証言をしたのは、誤りである。

(三) 被上告人の、見解は、誤謬である、尚兄隆吉がいたから心配はない。

(四) 耕作名義や、米穀売渡名義は、形式でない、本当である。

春光、貞吉の、名義は、なかつたとすれば、隆吉名義は、必ずある。

(五) 春光の通帳は、春光のもの。貞吉の通帳も亦然りで、原告は支配、管理したとは、暴言で、ありえない事である。

(六) 肥料及び、農業資料の買付は、自分以外のものはしていない。

但し、農薬だけは、共同撒布したので、上告人の通帳で買い、精算した。

(七) 被上告人の、事実誤認である。

(八) それは、春光貞吉の兄隆吉が、していたのである。

六、隆吉が弟二人に、自分の耕作地を、耕作せしめたからとて、上告人の所得の分散、租税回避とはならない。

以上のとおり、石川功の陳述に対して、上告人は反論するのである、石川功の証言を認めてした、原審判決は、破棄すべきものであることを、上告人は主張する。

以上、いずれの論点よりするも、原判決は違法であり破棄さるべきものである。

以上

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